私の物語①

「恋は人を壊す」・・

そのとき、私たちは近くのロイヤルホストでお茶を飲んでいた。
11時過ぎていたけれど、離れられなくて、もう少しだけ一緒にいたいと
立ち寄ったのだ。
6年前の4/14の出来事だ。
あの日から、私は不安の海に投げ出され、いまも助けを求めて
漂っている。

楽しい会話の中でふと、彼が話す昔の恋人の話が「現在形」
なのに気がついた。「あいつは飲み友達だから・・」

「まさか、まだ会っているの?」

少し、間をおいて彼が答えた。

「ときどき・・」

「部屋に泊まったりはしてないよね」

「・・・遅くなって帰るのがめんどくさかったりしたときは。
ごめん。でも、男女の関係じゃないし、君がこんなに傷つくと
思わなかったんだ。もう会わないから」

彼女は、彼の20年近く続いた愛人だった。
彼女が別れを決めたらしいが、分かれた後、ずるずると
会い続けていたのだ。
つい数ヶ月前まで恋人同士だった人の家に泊まって
「何もない」と言われてもにわかには信じられない。
いや、何もなくても、そんな場所に言っていること自体を
どう理解していいのかわからない。

電話が頻繁にかかってくることは知っていた。
けれど、まさか泊まったり・・ということはないと信じきっていた。

全身から血の気が引いた。
あまりのショックに目がよく見えない。
心臓は動いていただろうか。

こんなこと、よくある話だ。

でも、この瞬間から、私は「不安」と「見えない恐怖」の
病に取りつかれたのだった。